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【原神】パイモンが喋りすぎという話題:ストーリー表現は良くないよね

(※注:魔神任務やイベントストーリーのネタバレを含みます。) 

 Redditに「miHoYo please, stop abusing exposition with Paimon.」という記事が投稿され、それをGameSparkが取り上げ、記事にした。


https://www.reddit.com/r/Genshin_Impact/comments/s5mr1c/mihoyo_please_stop_abusing_exposition_with_paimon/

 (※できれば、Redditの投稿のほうを読んでほしい。)


 本稿ではこの話題について、誤解のないように注意してほしいという点と、原神というゲームのストーリー表現という二点について述べたい。

 ストーリーについてがほとんどで、パイモンどうこうはあんまり関係ない記事になってます。


1.論点はパイモンが喋ることじゃないよ

  Redditの投稿タイトルは、「stop abusing exposition」だ。「解説の濫用をやめろ」という意味でいいと思う。
 もちろん投稿の内容もそのようなものについてである。

 しかし、GameSparkの記事のタイトルは「おしゃべりしすぎ!」というものになっており、非常に誤解を招きやすいと思う。

 GameSparkの記事の内容自体はRedditの投稿に準じており、「無意味な説明は物語に不要だ」という要点を取り上げている。
 しかしタイトルはやはりキャッチーなものにする必要があるのか、「おしゃべりしすぎ!」になっている。
 「パイモンは解説過剰ではないか」みたいな記事のタイトルにするよりは、確かにこちらのほうが良いのだろう。

 タイトルに「「パイモン」に不満を抱くプレイヤーが多発」とあるが、そういうことではない
 
 これについては誤解のないように気をつけていただきたい。GameSparkの記事は誤解を招きそうで良くないと思う。


2.改めて、論点:「過剰解説」

 もちろん、「パイモンがおしゃべりしすぎ!」という話もできる。

 パイモンが好きじゃないとか、釣りの掛け声がうるさいとか。
 あるいは逆に、パイモンが喋ってくれるから原神が楽しいとか、ナビゲート役、物語の進行・ボケとツッコミにおいて重要な役割だとか。

 そういう話題ももちろんあるのだが、Redditの投稿はそういう種類のものではなく、この記事で取り上げるのもそこではない

 ここでの論点は「stop abusing exposition」、すなわち「過剰な解説をやめろ」というものである。


3-1.過剰解説の例

 Redditの投稿では、先日あったポーションスタディーでの会話が取り上げられている。
 ティマイオスの長めの会話の後、パイモンが要点を解説し始める。

Redditの投稿より。

 「つまり、ティマイオスが参考にした資料は、香膏の効果を誇張していただけで…こいつも詩の意味を誤解していた。その結果、「煙霰丹剤」を錬金術で作るすごい薬剤だって思い込んじゃったってことか?」

日本語版。

 私が過去に解説過剰と感じたのは、魔神任務「俺たちはいずれ再会する」のラストで、プレイヤーが双子の兄と再開するが、結局また別れてしまったあとのパイモンの解説だ。
 (妹選択の場合。)

 「あいつらが話してたこと難しかったよな。全部理解できたか? そっか…じゃあもう一回整理しようぜ。」
 「まずはあのアビスの使徒、おまえのお兄さんを「王子様」って呼んでた。
 おまえのお兄さんはアビス教団を率いてて、アビスの使徒よりも地位が高いってことだな…一番高いかどうかは分からないけど」 …… 以下略

このあとも、アビス教団やカーンルイアとダインスレイヴ、天理と七神について、いろいろと説明。


3-2.表現不足で解説のみの例(ネタバレ満載)

 こちらはパイモンの過剰解説とは異なるが、ゲームのストーリーとしてプレイヤーが理解すべきことを、解説のみで済ませてしまっている例を二つ挙げる。

 稲妻の魔神任務で、哲平はモブキャラであるが、物語において印象に残る役割があり、主人公の行動理由にもなった。
 しかしその表現はあまりにも不足していて、雑だ。

 哲平が活躍し、体調が悪くなっていくという重要な部分は哲平が説明するのみで、最終的に家の脇でぐったりと座り込んで以降、出番がない(対雷電将軍でセリフのみ出てきたが)。

 哲平が座りこんでいるときに話しかけると「哲平の息がどんどん弱々しくなってる…」とパイモンが言うのみだ。
 しかし任務画面で確認すると、「戦友哲平の死をきっかけに、あなたの心の中には抑えられない怒りの炎が…」と解説されている。

 「死んだの!?」と思ったプレイヤーもいるだろうし、任務画面を開かなかったプレイヤーはその表記を知らないため、その後哲平がどうなったかを知るすべがない。


 あるいは、ラストの八重神子との質疑応答タイム
 神の心を差し出したこと、散兵が原型の人形だということ、前任の雷電将軍、バアルとバアルゼブル、「眞」についてのこと。

 これらについて、質問して、文章で説明されて、終わり
 もちろん全てをイベントやムービーで表現するべきだとは言わないし、神の心を差し出したあたりのことは、ああいう説明で表現するのも良いとも思う。
 しかしそれでも、様々なことを「実はこういうことでした」と説明されても、「あ、そうなの。」「知らんがな」という感想にしかならないと思うようなことも、少なくない。


4.重要なのは、「どう表現するか」ということ。

 Redditの投稿でも、「we have to immerse and think for ourselves.」、「Show more and explain less, please.」と述べられている。
 「自身で考えるから、説明を減らして、もっと表現を。」ということで良いと思う。意訳しすぎか。 

 「どう表現するか」というのは、作品において非常に重要な要素である。
 ゲームでも漫画でも小説でも何でも、起こったことを箇条書きにして説明されても、全く面白くないだろう

 逆に今回の件のように解説過剰なのも、うんざりして萎えてしまう要因だ。

 以前に別の記事でも引用したのだが、過去に放送されていた「エンタの神様」という番組では、それぞれの芸人のネタに字幕や解説が加えられていた
 アンジャッシュのコントでは、「渡部は○○だと思っている」「児嶋は××だと思っている」というような、コントの解説やセリフのテロップが入っていた

 ネタを解説するなんて寒いし、渡部氏も「ネタのせりふをテロップで入れるなんて耐えがたかった。出演したくないって、総合演出だった(プロデューサーの)五味(一男)さんと朝までけんかした」という。


 原神の話に戻ろう。
 任務については、魔神任務伝説任務世界任務という区分があり、それぞれの役割がある。
 メインストーリーとして魔神任務があり、プレイアブルキャラについての伝説任務(あるいはデートイベント)、地域や住人についての世界任務という表現方法は、良いものだと思う。 

 あるいは、「ゲーム内では表立って表現しない」というのも、一つの表現方法だ。

 原神にはゲーム以外でも、公式動画公式漫画に、過去のストーリーを表現しているものがいくつもある。
 あるいはゲーム内でも、様々な看板石碑などから世界について知ることができたり、聖遺物武器などのフレーバーテキストから歴史を知ることもできる。

 何でもかんでもイベントやムービーにすれば良いわけでもない。上記のようなバックグラウンドや細かい設定については、そういう表現の仕方で良いと思う


5.何が良くないのか:ゲーム体験との親和性

 例えばRedditで取り上げられた、ティマイオスと鶯の会話をパイモンが要約して解説した場面では、何が問題だったのか。

 「パイモンが解説したこと」というよりは、「パイモンが解説しなければならなかった会話と展開」が、問題だと思う

 原神の会話は、ハッキリ言ってテンポが悪く、冗長なものが多い
 キャラが立っていてただ会話しているだけなので、ゲームプレイヤーとしてはあまり面白くもない。
 他の言語がどう感じられるかはわからないが、翻訳の問題もあり、あまり頭に入ってこない文章も非常に多い。

 イベントや任務では、移動中や戦闘中にキャラたちが会話することがたまにある。あのシステムなら冗長ではなくなるが、戦闘に集中すると話を聞いていられない問題が生じる。

 ポーションスタディーの件では、ティマイオスが勘違いしており、ポーションを作り、どうこう……というのは、プレイヤーのゲーム体験に全く関係がなかった
 なんか勝手にパイモンとティマイオスが会話して、璃月に行って鶯と会話して、結局やることは戦闘イベントで、バフを選べるというだけだ。
 極端に言えば、ティマイオスや鶯とのやりとりは無くても良かったのではないか

 これが別の展開、ゲーム体験だったらどうだろうか。

 まずティマイオスに、ポーションができたから使ってみてくれと言われ、イベント戦闘をする。
 しかしあまり効果が感じられず、パイモンが「これ本当に効果があるのか?一度ティマイオスのところに戻ってみよう」と言い、そこでティマイオスの説明を受ける。
 ティマイオスが詩について語り、旅人と共に璃月へ。
 鶯に薬剤の詳細を聞く(材料を集めるお使いがあってもいいかもしれない)。
 薬剤が出来上がり、戦闘イベントへ。初めの方はあまり薬の効果が良いものばかりではなく、マイナスな効果があるものも含まれているかもしれない。
 イベントを進めるとティマイオスの研究も成果が出ていき、鶯にアドバイスを聞きながら良い効果のポーションを作り、それを使用して戦闘イベントをさらに有利に進めていく。

 
 例えばこのようなゲーム展開だったら、(それが面白いかは別として、)プレイヤーもストーリー・展開が割とすんなり頭に入っていくと思うし、自らのゲームプレイ体験とも合致する。

 それが実際は、全て長々と会話で、よくわからない用語で説明されて、結局パイモンが要約して、勝手にポーションが出来上がって、プレイヤーは戦闘イベントをやるだけ。

 これは、ストーリーとゲーム体験が親和していない
 プレイヤーのゲーム体験とは別に会話が進んでいくため、あまり興味をそそられないし、頭にも入りにくい。

 これは魔神任務の哲平の話についても、同じようなことが言える。旅人はメカジキ二番隊の隊長になったというが、ほとんど何もしていない
 哲平もニシン一番隊の隊長になったらしいが、具体的に何があったのかはプレイヤーにはわからなかった。

 実際に隊長として何かをしたとか、哲平の活躍によって何かがあったというのを、プレイヤーがゲームとして体験できていれば、わからないという自体にはならない。
 パイモン(や他の人)にわざわざ解説をされなくても、自身がキャラクターを操作し、敵と戦ったり哲平と協力したりしていれば、ストーリー展開は自ずと理解できるはずだ

 こういう部分が、Redditの投稿にある「Show more and explain less, please.」だと思う。


6.そういう意味では、鶴観のシステムは良かった。

 ストーリーや会話の内容は別として、鶴観の物語のシステムは良かったと思う
 ストーリーの内容・進行と、プレイヤーのゲーム体験が親和していた

 プレイヤーがアクションを起こすことで、霧が晴れる。しかし次の日に訪れると、再び霧がかかっていたりする。
 ただ会話を聞くだけでなく、それこそプレイヤーが「旅人」となって鶴観のイベントをこなしていくのだ。

 魔神任務の抵抗軍にまつわるストーリーも、このような形式だったらもっと面白かったと思う。

 プレイヤーが実際に隊長として戦闘をこなしていき、日が変わるごとにイベントや戦闘が追加されていく。
 たまに哲平を助けたり、あるいは哲平に助けられたり。そこで哲平がだんだん強くなっていけば、プレイヤーは説明されずとも体感できる。そして、いつの間にか哲平の髪が白くなっていくことに気づく。

 会話イベントだけでなく、プレイヤーのゲーム体験として、そしてできれば鶴観のように日を跨いだりすることによって厚みをもたせて(引き伸ばしとも言うが)、ストーリーを表現してもらいたいと思うこともある。
 全てがそうであれとは、もちろん言わないが。


7.ソシャゲ的な進行になってしまうのは仕方ない

 原神は、ソシャゲ的に開発されている。ガチャシステムの話ではない。
 1本の買い切りゲームではなく、アップデートごとに物語が追加されたり、期間限定でイベントが行われているようなシステムだ。
 だから、ストーリーもそういうふうに作られてしまう。

 もちろん統計データなどはないが、「しばらくプレイしていなかったが、稲妻実装で復帰した」、あるいは「稲妻から初めた」という人も多くいるように感じられた。

 原神というゲームにどれほど熱を入れられるかは人によって異なるが、「魔神任務を読んで、新キャラをガチャで引ければ、それだけでいい」という人も少なくないと思う。

 ソシャゲ的な作りのゲームでは、それが重要だ。しばらく離れていなくても、復帰して少しプレイすれば稲妻編もプレイできるように。
 稲妻から初めた新規プレイヤーも、やり込めば1週間で最新のストーリーまで追いつけるように
 ソシャゲであるがゆえに、そういう作りにしなければならない。

 めんどくさい要素や細かい要素は、やりたい人だけがやればいい。
 そういうのは魔神任務には取り入れず、世界任務や書籍、フレーバーテキストで補完する。
 それはいい意味で作用しているとも思うが、魔神任務の薄っぺらさにもつながってしまい、重要である要素も解説されて終わりという事態になってしまう

 それでいいというプレイヤーもいるだろうし、そうでないプレイヤーもいる。どちらが正しいとか、そういう話ではないが。


まとめ:「解説」よりも「体験」

 「パイモンの過剰解説をやめろ」という話題から、かなり逸脱してしまった。

 Redditの投稿にある「Show more and explain less, please.」が、要点だと思う。
 私の言葉で表現すれば、「プレイヤーのゲーム体験とストーリー・会話を親和させる」ことが重要だと思う。
 
 プレイヤーに関係ないところで会話が進むようだと頭に入らないし、興味もわかない。
 パイモンに要点をまとめさせないと、プレイヤーは理解できなくなってしまうのも当然だ。

 ポーションスタディーの会話だと、プレイヤーはティマイオスと鶯の会話に興味がそそられないし、実際にゲーム体験とは関係がない。だからパイモンに要約させないとわからなくなる。

 あるいは、魔神任務「俺たちはいずれ再会する」パイモンの要約も、あれがないとよくわからない。
 プレイヤーがゲームを進めることで理解できるものではない。「アビスやらカーンルイアやらは実はこういう設定になっています」と説明されないと、プレイヤーは絶対に理解することができない。
 そういう内容のゲーム体験をしていないから。

 
 まとめると、「パイモンが解説すること」自体が問題というよりは、「パイモンに解説させなければならないような会話の進行、展開、表現の仕方、ゲーム体験との親和性のなさ」が、問題なのだと思う

 プレイヤーがゲームを進めていけば自然と会話やストーリーが頭に入っていくような展開・表現の仕方であれば問題はなく、パイモンもわざわざ要約や解説をすることはないだろう。

 原神の会話はテンポが悪く冗長で頭に入りにくく、それでいて重要でないものも多く、そのなかに非常に重要な説明があったりする。
 そういうのは、なんとかしてほしい問題だと思う。


2022/01/19 山下

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